意外と知らない「かぜ」のお話

2018年9月5日

こんにちは。月曜日の夜診と水曜日の午前診を担当しております、古結(こげつ)です。今回は、誰にでも起こりうる「かぜ」について解説したいと思います。
さて、いきなりですが、「かぜ」と言っても、人それぞれどういう時に「かぜかな?」と思うかは違うと思います。鼻水が出る、咳が出る、のどが痛い、熱がある、だるい…これらは全て「かぜ」によっておこりうる症状ですが、「かぜ」ではなくても生じることがあります。
では、どのように「かぜ」と診断しているのかというと、これが意外と難しいのです。特に、熱以外の症状がないのに熱だけが続く場合は、本当に「かぜ」なのかどうかの判断が必要かもしれません。「かぜ」の診断は、どちらかというと治って初めて「『かぜ』という診断で(おそらく)良かったのだろう」ということになることが多いので、他の重篤な疾患の可能性が低いことが前提となりますが、「かぜ」という仮の診断の元に経過をみるというのが基本的な方針になります。なぜかというと、「かぜ」のうち約90%はウイルスが原因だといわれていますが、ウイルスといっても多種多様であり、それらを日常診療において検査などによって検出することが不可能なのです。では、私たち医療者が具体的にどのように「『かぜ』らしい」と判断しているのかというと、(1)「急に」鼻水、咳、のどの痛みといった症状が出現する。(2)全く食欲がない、寝込むほどにだるい、といった全身の症状が目立たない。(3)震えるほどの寒気や高熱、ひどい頭痛、息苦しさ、つばを飲み込めないなどの重篤な症状がない、といった、様々な情報を総合的に判断しています。簡単そうで意外と複雑なんですね。抗生物質が処方されなくなったのはなぜ?
さて、次に「かぜ」のときの対処について解説します。最近、「かぜ」と言われても抗生物質を出してくれなくなった、とお気づきの方も多いのではないでしょうか。これは、先程あったように、原因のほとんどがウイルスの感染であることと関係しています。抗生物質(正確には、抗菌薬といいますが)はウイルスには効果がなく、特定の「ばい菌」(医学用語では細菌といいます)にしか効果がありません。これまでは「かぜ」をこじらせて気管支炎、肺炎などの「ばい菌の感染」をおこすことを心配して抗生物質を処方することがありましたが、最近は抗生物質そのものの副作用(下痢、アレルギーなど)や抗生物質の乱用による耐性菌(本来効くはずの抗生物質が効かない「ばい菌」)の問題が注目されるようになり、必要に応じて処方することが多くなりました。また、一口に「抗生物質」「ばい菌」といっても、たくさんの種類があります。抗生物質の種類によって、その抗生物質が効果を示す「ばい菌」と、そもそも効果を示さない「ばい菌」があります。「どういう人の」(免疫状態や重症度など)、「どこに」(肺や腎臓などの感染した臓器)、「どういう『ばい菌』が」(原因となっている細菌)感染したのかによって抗生物質を使い分けますので、医師の判断が必要になります。「かぜ」にかかったら…
では、「かぜ」にかかった場合、どうしたら良いのでしょうか。まずは十分な休息をとりましょう。「かぜ」に抗生物質が効かない以上、残念ながら「かぜ」の特効薬はありません。でも大丈夫です。人が持っている免疫機構によって「かぜ」はだいたい10日間以内に自然に良くなってきます。なので、早く治すためには、免疫機構がきちんとはたらく環境を整えるように十分な休息がとても重要です。もちろん、「かぜ」による諸症状(鼻水、咳、のどの痛み、微熱など)を和らげるお薬はありますし、症状の程度に応じて処方します。知っておきたいのは、これらのお薬はあくまで「症状を和らげる薬」であって、「『かぜ』を根本的に治す薬」ではないということです。
これまで、「かぜ」に関する簡単な解説をしました。ほとんどの人が経験したことがある「かぜ」ですが、意外と知らないことも多かったのではないかと思います。病気に対する知識が少しでもあれば、病気にかかった時の不安も少し和らぐかもしれません。もっと知りたいこと、困ったことがあればいつでもご相談ください